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BED j.w. FORD 2024年秋冬コレクション

デザイナー山岸慎平が手がけるBED j.w. FORDが2024年春夏コレクションをパリで発表しました。テーマは「after (that) scene」


山岸は「あの頃」を振り返ることから今回のコレクションをスタートさせました。これまでデザイン上の回顧主義に無関心を示してきたデザイナーは、この機に「もうひとりの自分と昔話をしながら未来を見ていた」のだと語りました。

彼はアーカイヴとの対峙という経験したことのないデザインのプロセスを、「古傷を掘り起こし、追体験すること」だと喩える一方で、自身に深い影響を与え続けるデザイナーやブランドとのかつての邂逅が、彼自身の装いとユニークな美学に永遠に欠かせないものであると再認識していきます。敬愛を共有する懐旧談は過去と現在のパラレルな対話であり、「一見すると関連のない蔵書に思うがままに付箋をつけていくような作業だった」と話します。そして、デザインの足がかりは実にシンプルです:もし今の自分だったら?


過去を見通すことは、時に未来を眺望することを意味します。「この時代における、もうひとつのエレガンス」を志向する彼は、かつてのデザインに内在し琴線に触れるエッセンスを直観的に受け入れ、自身のモダンなリアリティを照射しては刷新し、一着一着を昇華させていきました。

同時に、「明日の自分が着たいと思えるかどうか」という不変的な禅問答と向き合い、「新たな一冊」を編纂するための整合性との闘いも共存していました。


霞んだフィルムのようなモノトーンとスモーキーでシックなカラーパレットに静謐なきらめきが潜むコレクションでは、ブランドやデザイナーにとっても親しみ深い多様なワードローブを基調に、ボディスケールにとらわれず肩肘を包むアームシルエットや、トラウザーズのワイドシルエット、身体と呼応して流れ動くコートに、飄逸で着心地の良い、潔いフォルムが立ち上がっています。


「after (that) scene」コレクションに通底するノンシャランな態度は、「着る人に馴染みがよく、身体への収まりの良さ」となって具現化され、構築的なバイカースパッツや大振りのヘッドアクセサリーをイコンにした緊張と緩和が繰り返されるスタイリングそのものにも可視化されています。それに、ウエストラインのカットアウトや、クラッシュディテール、カジュアルなチェック柄のテキスタイル、目を引くビビッドなカラーは、全体における反目のシグナルとして、馴染みのあるシーンに対する未視感を引き立たせています。


山岸は、自分の記憶や経験、気分を俯瞰し、より良い未来に向けて進んでいます。

つまり、このコレクションはまだ見ぬ人たちとの出会いを期待し、人々のクローゼットに違和感をもって共存しうるものだと言えます。



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