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KEISUKEYOSHIDA 2023年秋冬コレクション


デザイナー吉田圭佑が手がけるKEISUKEYOSHIDAが2023年秋冬コレクションを発表。


今季のデザインの始まりとなったのは1人の少年との出会いにあったとデザイナーは語った。KEISUKEYOSHIDAのトレンチコートを纏い佇む少年は、KEISUKEYOSHIDAとの出会いによって暗鬱だった心が救われたのだと、初対面の吉田圭佑に声をかけた。自分のためと信じ続けてきた救済のような創作行為が誰かを生かしている。その告白に、吉田もまた救われたという。少年の言葉の端々や雰囲気の中に、過去の自分がいるような感覚を覚えた。少年には、ある種の気品──後にそれが少年の傍らに優しく寄り添う母親の影響なのだと吉田は気がついた──が漂っていた。心に抱えた葛藤と、育ちのよさに起因する行儀のよさ。未成熟な少年と、成熟した淑女の同居。その混淆にもまた、デザイナーは自分自身を重ね合わせていた。規律への従順さとフラジャイルな少年の純真さから滲み出るエレガンス。その背景に、たとえば教師や修道士、そして両親のような存在が持つ厳格さ(strict)を見出した吉田は、デザインを介して描き出す人間像にその感触を投影したいと考えた。その想いからファーストルックのモデルをこの少年に託し、コレクションはスタートした。


吉田が目指した厳格さを端的に表したのが今季の特徴である首元のデザインだ。ブローチで首元を窮屈にすぼめられたジャケット、首に沿うようにラペルが高く立てられたジャケットやコート、裏地がスカーフやボウタイのように首に巻き付いているステンカラーコート。

それらのデザインからは高潔で禁欲的なムードが漂う。


その高潔と禁欲の間に挟まれるように、首元が無造作にえぐり取られ胸元まで開いたニットや、アーティストのIKUMI KAKIHARAによって無数の“LOVEと“LONELY”が描かれた皮膚のように薄いスキンベージュのラテックス製ボディスーツが登場し、理性では抑えきれない衝動を見せることで人間としての生を垣間見せる。


今回のコレクションを“THE LAST”と銘打ったデザイナー吉田圭佑。

KEISUKEYOSHIDAの原点だった“等身大の装い”はコレクションの発表を重ねるごとに、その不安への代償行為的に過剰性を帯び、そのことをデザイナー自身も自覚し苦悩していた。

そんな時、少年に出会い、厳格さというムードを発見したことは、その苦悩から脱するための一筋の光になった。“過剰”を削ぎ落とすには覚悟と自信が必要で、毎日不安と恐怖で押しつぶされそうだと吉田は言う。


しかし、クリエイターにとって苦悩は新しいものを作るための通過儀礼であり、今回大きな壁を突破してみせたKEISUKEYOSHIDAにとって、この“THE LAST”が新たな出発点であったと、後に振り返られるほどの進化を見せたコレクションだったと言えるだろう。




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